⏱️ この記事で分かること(読了時間:約7分)
✅ 実績単価と歩掛の正確な定義
✅ 歩掛が軽視される理由
✅ 歩掛がコストダウンの鍵である理由
✅ 収集が不十分になる3つの原因
✅ 確実に収集するために必要なこと
実績単価と歩掛を感覚的に分かっていても、論理的に捉えている人は少ないようです。
多くの企業で、実績単価は意識されています。将来の見積もりや実行予算作成に重要な資料となることは、誰もが理解しているからです。
しかし、歩掛については軽視されがちです。実際に作業完了後や工事完了後に、歩掛を分析している企業や個人は少ないのが現状です。
本記事では、実績単価と歩掛を論理的に理解し、その重要性を再認識します。
実績単価とは何か
実績単価とは、細目の作業ごとにおける実績原価の単位単価です。
例えば、切土法面整形工において:
- 実績原価総額:100,000円
- 施工数量:1,000㎡
- 実績単価:100円/㎡
この実績単価は、次の工事の見積もりや実行予算作成における重要な参考値となります。
実績単価を把握することで:
- ✅ 自社の実際のコストが分かる
- ✅ 適正な見積単価を設定できる
- ✅ 利益を確保できる受注価格を判断できる
歩掛とは何か
歩掛とは、1施工単位当たりの投入資源工数です。
同じく切土法面整形工の例で:
- 使用機械:バックホウ0.7m³級
- 投入工数:200時間
- 施工数量:1,000㎡
- 歩掛かり:0.2時間・台/㎡
一般的に建設機械においては、時間当たりの作業能力から計算されることが多いです。
実績単価と歩掛の関係:
実績単価 = 資源単価 × 歩掛
例:
機械単価:5,000円/時間 × 0.2時間/㎡ = 1,000円/㎡
※機械単価 = 機械損料 + 燃料油脂費 + 修理費 + 消耗品費 + 人件費
歩掛が軽視される理由
実績単価の重要性は多くの企業で認識されていますが、歩掛については軽視されがちです。
その原因は3つあります:
1. 実行予算のWBS(実行予算体系)構築が曖昧
- 作業区分が明確でない
- 集計単位が統一されていない
- 施工数量の定義が不明確
2. 工事日報の記入が不正確
- 投入工数の記録が大雑把
- 作業区分と実行予算が連動していない
- 「その他」や「雑作業」が多い
3. 両者の連動ができていない
- 実行予算と工事日報の作業区分が一致しない
- 集計の仕組みがない
- 分析する習慣がない
前回の記事で説明したように、実行予算のWBS構造と工事日報の作業区分を連動させることが、歩掛収集の前提条件です。
歩掛こそがコストダウンの鍵
実は、歩掛こそが、実績単価構成の重要な要素であり、生産性の指標として欠かすことのできないものです。
歩掛が重要な理由:
1. コストの内訳が分かる
- どの資源(労務、機械、材料)にどれだけ工数がかかっているか
- 標準歩掛との比較で効率が分かる
2. 生産性が数値化できる
- 「あの現場は効率が良かった」という感覚ではなく
- 「歩掛が0.2時間/㎡で、標準より20%効率的だった」と数値で把握
3. コストダウンの可能性が見える
- 歩掛が悪い(工数が多い)作業を特定できる
- 改善の優先順位が明確になる
- 改善効果を数値で測定できる
ここにコストダウンの可能性を見つけることが重要なのです。
実績単価だけでは不十分な理由
多くの企業は実績単価を収集していますが、それだけでは不十分です。
例:2つの現場の比較
A現場:実績単価 100円/㎡
- 労務費:40円/㎡
- 機械費:50円/㎡
- 材料費:10円/㎡
B現場:実績単価 120円/㎡
- 労務費:50円/㎡
- 機械費:60円/㎡
- 材料費:10円/㎡
実績単価だけを見ると、「B現場はA現場より20円高い」という事実しか分かりません。
しかし、歩掛まで分析すると:
A現場:
- 労務歩掛:0.04人日/㎡(標準的)
- 機械歩掛:0.20時間/㎡(標準的)
B現場:
- 労務歩掛:0.05人日/㎡(25%多い)
- 機械歩掛:0.24時間/㎡(20%多い)
原因が明確になります:
- B現場は作業効率が悪かった
- 段取りに問題があった可能性
- 次回は改善の余地がある
このように、歩掛まで分析して初めて、改善のヒントが得られるのです。
歩掛収集を実現するために
歩掛を確実に収集するためには、以下が必要です:
1. WBS構造の標準化
- 実行予算の作業区分を明確に定義
- 工事日報の作業区分と統一
- 全社で同じ基準を使用
2. 工事日報の正確な記入
- 投入工数を作業ごとに正確に記録
- 「その他」や「雑作業」を最小限に
- 施工数量も同時に記録
3. 収集・分析の仕組み化
- 手作業での集計は現実的でない
- システムによる自動集計が必要
- 作業完了時点で分析結果が得られる
KUROJIKAによる実績データの収集
ニックスジャパンの工事日報・原価管理システム「KUROJIKA」では、実績工数の収集と実績原価の算出を効率化します。
日々の工数入力により、作業ごとの実績工数と実績原価を蓄積し、次の実行予算作成に活用できます。
タッチパネル式作業予定表システム「e-番割」と組み合わせれば、工数入力も自動化できます。

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