工事原価管理の基本④|建設業に「生産管理部門」がない問題 - ニックスジャパン株式会社

 

⏱️ この記事で分かること(読了時間:約6分)

 

✅ 建設業で工事管理が軽視されてきた背景

✅ 重層下請構造と需給関係がもたらす影響

✅ 製造業の生産管理部門との決定的な違い

✅ 建設業でコストダウンが組織的にできない理由

✅ 生産管理機能を持つための第一歩

 

なぜ建設業で工事管理が軽視されてきたのか

 

なぜ、建設業では工事管理を軽視するようになってきたのでしょうか。それには、それなりの理由があったからです。

 

重層下請構造の問題

 

建設業が抱える多くの問題のひとつとして、重層下請構造があります。

元請から一次下請、二次下請、三次下請へと仕事が流れていく中で、各階層がマージンを取る構造になっています。この構造の中では、現場で生産性を向上させるよりも、下請への発注価格を調整することで利益を確保するという発想になりがちです。

 

現場の作業効率を改善して1円のコストを削減するよりも、下請への発注単価を1円下げる方が手っ取り早い——そのような考え方が根付いてしまいました。

 

需要と供給による価格スライド

 

もうひとつの要因は、需要と供給の関係による価格スライドです。

かつての建設業界は、公共事業を中心に潤沢な需要がありました。仕事が豊富にある時代には、価格競争よりも受注量の確保が優先されます。原価が多少かさんでも、次の仕事で取り返せばよいという発想が通用したのです。

 

重層下請構造と需要供給の関係により、請負価格がスライドし、生産性向上やコストダウンが軽視されてきたと言えるでしょう。

 

時代は変わった——軽視できなくなった現実

 

現在の建設産業の動向は、かつてとは大きく異なります。

公共事業の縮小により需要が減少し、供給側の整理・淘汰が始まっています。仕事量が減れば、当然ながら価格競争は激化します。かつてのように「次の仕事で取り返す」という発想は通用しなくなりました。

しかしながら、生産性向上やコストダウンを確実に行っているかと問われれば、製造業と比較しての視点で見ると首を傾げざるを得ない状況です。

建設産業もコストダウンに取り組んではいます。しかし、それは工法の開発やVEによる設計変更等がほとんどであり、現場の効率化には目が向いていません。

 

工程会議も当然ながら実施されていますが、「いつ作業が終わるか」の報告が主であり、「いかに効率よく作業するか」という視点は希薄です。主題は「いかに要求品質のものを作るか」に偏っているのが実態ではないでしょうか。

 

製造業との決定的な違い

 

コストダウンについて、他産業と比較して考えてみましょう。

 

製造業の生産管理部門の役割

 

製造業には、生産技術あるいは生産管理という組織があります。

この組織は、主に生産現場での生産改善について日夜検討を加えている部署です。1円コストを削減するためにはどうすれば良いのか、1秒短縮するためには生産方法をどう変えればよいか——そのような課題に真剣に取り組んでいます。

トヨタや日産などの大手メーカーには、必ずこの生産管理部門が存在します。そして、部品メーカー(協力会社)の生産技術部門と一体となり、コストダウンを図っています。

 

1円でも安いものを作る。その努力を元請と下請が共同で行う。これが製造業の常識なのです。

 

元請・下請一体のコストダウン体制

 

製造業では、元請企業の生産管理部門が部品メーカーとともにコストダウンに挑んでいます。

単に「もっと安くしろ」と値下げを要求するのではありません。どうすれば工程を短縮できるか、どうすれば不良率を下げられるか、技術的な側面から改善策を一緒に検討するのです。

 

この協力関係があるからこそ、製造業は継続的なコストダウンを実現してきました。原価低減は、元請と下請の共同作業なのです。

 

建設業に生産管理部門がない現実

 

翻って、建設業に戻って考えてみましょう。

 

そのような組織は存在しない

 

生産技術なる部署が存在するでしょうか。

私の知る限り、そのような組織は元請・下請ともに見あたらず、そのような概念さえもないと言って良いでしょう。

極論を言えば、建設業でコストダウンと言える行動は、建設機械の大型化か新工法・新技術の開発がほとんどです。現場の作業方法を見直し、生産性を向上させていくという発想は乏しいのが実態です。

 

これでは、現場でのコストダウンとは全くかけ離れた世界に建設業がいると言っても過言ではないでしょう。

 

個人の技量に依存する現状

 

建設産業では、残念ながら生産管理部門が元請・下請ともに存在していません。

これでは、現場のコストダウンは組織的にできるはずもなく、個人の技量に任せているのが現状です。優秀な現場代理人がいれば利益が出る。そうでなければ赤字になる。このような属人的な状態が続いているのです。

製造業では、個人の技量に頼らず、組織として改善活動を行う仕組みがあります。だからこそ、人が変わっても一定の生産性を維持できるのです。

 

建設業に足りないのは、まさにこの「組織としてコストダウンに取り組む仕組み」なのです。

 

生産管理機能を持つための第一歩

 

それでは、建設業が生産管理機能を持つためには、どこから始めればよいのでしょうか。

 

日々の詳細原価把握の体制づくり

 

まず必要なのは、日々の詳細原価を把握し、報告や改善指示が展開できる機能を組織内に持たせることです。

現場の原価が月次でしか分からない状態では、改善のしようがありません。日々の段階で、どの作業にいくらかかっているのか、予算に対してどうなのかを把握できる体制が必要です。

 

この体制があってはじめて、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。

 

情報の一元管理と共有

 

もうひとつ重要なのは、工事情報を一元管理し、必要な人が必要なときにアクセスできる環境を整えることです。

 

現場代理人だけが情報を持っていて、工事部長や経営者が把握できていない——この状態では組織的な管理は不可能です。情報が共有されてこそ、組織としての判断と指示が可能になります。

 

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