⏱️ この記事で分かること(読了時間:約6分)
✅ 積算の役割が「予定価格算出」から「戦略的価格設定」へ変わった理由
✅ 標準歩掛では受注できない時代の現実
✅ 実績単価を収集・活用する重要性
✅ 最低受注価格の把握方法
✅ 戦略的な価格決定を可能にする仕組み
変わる積算の役割
従来の積算業務とは、予定価格を導き出すためのものでした。しかし、現在の厳しい受注競争において、積算の役割は大きく変わっています。
予定価格算出から戦略的価格設定へ
かつての積算業務は、設計図書に基づいて数量を拾い、標準的な単価を当てはめて予定価格を算出するものでした。
公共工事であれば、発注者が設定する予定価格に対して、どの程度の金額で応札するかを検討する。民間工事であれば、適正な利益を乗せた見積金額を提示する。それが積算担当者の主な役割でした。
しかし、現在の積算に求められるのは、単なる価格計算ではありません。「この価格で受注して、本当に利益が出るのか」「どこまで価格を下げられるのか」——そのような戦略的な判断を支える情報提供が求められているのです。
標準歩掛では受注できない時代
今までの標準歩掛から導かれる単価で受注できる環境は、もはやなくなりました。
標準歩掛とは、国土交通省などが公表している一般的な施工条件における投入工数の目安です。この標準歩掛を使って積算すれば、「一般的にはこのくらいの費用がかかる」という予定価格が算出できます。
しかし、競合他社も同じ標準歩掛を使って積算しています。皆が同じ基準で計算すれば、当然ながら似たような金額になります。そこから価格競争になれば、根拠のない値引き合戦に陥るしかありません。
今後の受注競争を勝ち残るためには、自社の強み・弱みを金額ベースで把握しなければならなくなったと言って良いでしょう。
実績単価活用の重要性
戦略的な価格設定を行うためには、過去の実績単価を活用することが不可欠です。
各作業毎の実績単価収集
これからは、各々の作業毎の単価を実績情報から追求することが求められます。
実績単価とは、実際の工事で発生した原価を施工数量で割った値です。標準歩掛に基づく予定単価ではなく、「自社が実際にいくらで施工できたか」という事実に基づく数字です。
この実績単価を作業ごとに収集・蓄積していくことで、自社の実力が数字で見えてきます。
- どの作業が得意で、効率よく施工できているのか
- どの作業が苦手で、コストがかさむ傾向にあるのか
- 同じ作業でも、現場条件によってどの程度の差が出るのか
これらの情報は、戦略的な価格設定において極めて重要な判断材料となります。
最低受注価格の把握
実績単価を把握することで、最低受注価格——つまり「これ以上下げたら赤字になる」というラインが明確になります。
従来の積算では、このラインが曖昧でした。「経験的にこのくらいは必要だろう」「前回はこの金額で受注したから、今回も大丈夫だろう」——そのような感覚的な判断に頼らざるを得なかったのです。
しかし、実績単価が蓄積されていれば、各作業の最低ラインが数字で分かります。この作業は最低でも○○円必要、あの作業は△△円が限界——そのような根拠のある判断ができるようになります。
最低受注価格が分かることにより、営業は「利益度外視で競争するのか、利益を求めていくのか」を戦略的に判断でき、応札金額の設定に幅を持たせることができるようになります。
戦略的価格決定のプロセス
実績単価を活用した戦略的価格決定の具体的なプロセスを見ていきましょう。
利益確保できる作業の特定
まず、どの作業で利益を確保できるのかを特定します。
実績単価と標準単価(または市場単価)を比較することで、自社の強みが明確になります。標準単価よりも低い実績単価で施工できている作業は、自社の得意分野です。この作業では、標準的な単価で見積もっても、しっかり利益を確保できます。
逆に、実績単価が標準単価を上回っている作業は、改善の余地があるか、あるいは自社にとって不得意な分野です。
この分析によって、「どこで稼ぎ、どこで勝負するか」という戦略が立てられるようになります。
価格を下げられる限界の把握
次に、どこまで価格を下げられるのかを把握します。
競争入札において、価格を下げることは避けられません。しかし、「どこまで下げられるか」の判断を誤れば、受注しても赤字という最悪の結果を招きます。
実績単価があれば、各作業の原価ラインが明確です。全体の見積金額から、どの作業でどれだけ削れるかをシミュレーションできます。
たとえば、「この作業は実績単価で計算すると、標準単価より10%低くできる。その分を値引き原資に回せる」といった判断が可能になります。
この作業によって初めて、どの作業で利益を確保できるのか、あるいはどこまで価格を落とすことができるのか、戦略的に価格決定ができるようになります。
実績単価を活用した見積作成
実績単価を見積作成に活用するための具体的な方法を解説します。
過去工事情報へのアクセス
これらの作業を実現させるためには、従来の営業・工事の体制では不可能であり、必要な時に必要な情報を得ることができる仕組みが必要となってきます。
具体的には、営業が積算業務において、必要な時に必要な実績単価を得る仕組みが必要です。
過去の工事でいくらで施工したのか、その情報にすぐにアクセスできる環境があるでしょうか。多くの企業では、工事が完了すれば情報は現場代理人の頭の中か、整理されていない書類の山の中に埋もれてしまいます。
これでは、せっかくの実績情報を積算に活かすことができません。
機動性の観点から、営業が整理・分析された過去の工事情報に、必要な時に他部門に連絡することなく、直接アクセスできる仕組みが不可欠です。
情報が一元管理されていることの重要性
このためには、情報が一元管理されていることが重要です。
必要な時に必要な情報にアクセスできる環境を整備すること。これが、戦略的な積算を実現するための大前提となります。
また、営業が厳しい価格で受注した際には、どの作業で気をつけなければいけないのか、速やかに営業から工事に情報が渡されなければいけません。
積算段階で「ここは厳しい単価で入れた」という情報が工事部門に共有されていれば、現場代理人は重点的に管理すべきポイントを事前に把握できます。
工事日報原価管理システム「KUROJIKA」と実行予算管理システム「MIYABI」のご紹介
実績単価を活用した戦略的積算を実現するためには、まず基礎となるデータの収集が不可欠です。
KUROJIKAによる基礎情報の収集
工事日報原価管理システム「KUROJIKA」は、日々の資源別の実績工数(稼働時間)を収集し、月次稼働時間一覧表を自動作成します。
この稼働時間のデータこそが、歩掛の基礎情報となります。歩掛の基礎情報がなければ、実績単価の算出も活用もできません。KUROJIKAによる日々のデータ収集が、すべての出発点となるのです。
MIYABIによる情報の一元管理と活用
実行予算管理システム「MIYABI」は、営業部門と工事部門が同一のデータベースにアクセスし、必要な情報を得る仕組みを備えています。
- 過去の類似工事の実績情報を簡単に検索
- 営業部門から工事実績情報にダイレクトにアクセス
- 積算段階での実績情報参照と見積精度の向上
KUROJIKAで収集した基礎情報を、MIYABIで一元管理・活用することで、戦略的な積算が可能となります。
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次回予告
次回は「勝ち残る積算戦略②」として、営業と工事の連携による情報一元管理について解説します。
営業と工事でデータが共有化されている企業はほとんどありません。情報がサイロ化している状態では、実績単価の活用も絵に描いた餅です。一元管理されたデータベースをどう構築し、どう運用するか、具体的に解説します。

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