⏱️ この記事で分かること(読了時間:約5分)
✅ なぜ同じ職人でも現場によって生産性が違うのか
✅ 職人の問題ではなく、段取りの問題である理由
✅ 「手待ち」が生産性を下げるメカニズム
✅ 段取りの良し悪しが会社の収益を左右する理由
✅ 現場責任者の段取り力を育てる重要性
はじめに
番外編の第3回は、「同じ職人でも50%の差が出る」というテーマでお伝えします。
建設現場で、こんな経験はありませんか。
ある現場では順調に進む。別の現場では同じ職人が同じ工種をやっているのに、なぜか進まない。
この差は、どこから生まれるのでしょうか。
同じ職人でも生産性が50%違う
職人の腕は同じ。工種も同じ。条件も似ている。それなのに、現場によって生産性が50%も違う。これは珍しいことではありません。
歩掛の差は職人の問題か
A現場では型枠工が1日で20㎡施工できた。B現場では同じ型枠工が1日で13㎡しか施工できなかった。
この差は、職人の腕の問題でしょうか。
いいえ、違います。
同じ職人が、同じ技術で、同じ工種を施工しているのです。職人の腕が急に落ちるわけがありません。
差を生んでいるのは「段取り」
では、何が違うのか。
答えは、現場責任者の段取りです。
A現場では、材料が予定通り届いていた。作業指示が明確だった。次の工程も準備されていた。
B現場では、材料が遅れて届いた。作業指示が曖昧で確認に時間がかかった。次の工程が決まっておらず、段取り替えに手間取った。
職人は同じでも、段取りが違えば生産性は大きく変わります。
「手待ち」が生産性を奪う
職人が手を止めている時間。これを「手待ち」と言います。手待ちの多い現場は、生産性が上がりません。
手待ちの実態
現場を観察すると、職人が実際に作業している時間は、意外と少ないことが分かります。
材料を待っている。指示を待っている。重機を待っている。前工程が終わるのを待っている。
これらの「待ち時間」が積み重なると、1日の作業時間のうち、実際に手を動かしている時間は半分以下になることもあります。
手待ちは職人のせいではない
手待ちが発生するのは、職人のせいではありません。
材料が届いていないのは、発注や搬入の段取りの問題です。指示が曖昧なのは、現場責任者の準備不足です。重機が足りないのは、配置計画の問題です。
つまり、手待ちは段取りの問題なのです。
手待ちをなくせば生産性は上がる
逆に言えば、手待ちをなくせば生産性は大幅に上がります。
職人が現場に着いたら、すぐに作業を始められる。必要な材料は揃っている。指示は明確。次の工程も準備されている。
こうした段取りができている現場では、同じ職人でも生産性が50%高くなるのです。
段取りの差が収益の差になる
現場責任者の段取りの差は、そのまま会社の収益の差になります。
歩掛が悪いと原価が増える
A現場の歩掛が20㎡/人工、B現場の歩掛が13㎡/人工だとします。
100㎡の型枠を施工する場合、A現場では5人工、B現場では約8人工かかります。
1人工あたり25,000円とすると、A現場は125,000円、B現場は200,000円。
同じ工事で75,000円の差が生まれます。
現場全体で考えると
これは型枠工だけの話です。鉄筋工、コンクリート工、設備工、電気工…すべての職種で同様の差が生じれば、現場全体では数百万円、数千万円の差になります。
同じ売上でも、段取りの良い現場と悪い現場では、利益が大きく違うのです。
会社の収益は現場責任者の段取りで決まる
記事30でお伝えした通り、「段取り八分、作業二分」という言葉があります。
現場の作業は2割に過ぎません。8割は段取りで決まります。
つまり、会社の収益は、現場責任者の段取り力で決まると言っても過言ではありません。
なぜ段取りの差が生まれるのか
では、なぜ現場責任者によって段取りの差が生まれるのでしょうか。
経験と知識の差
まず、経験と知識の差があります。
ベテランの現場責任者は、過去の経験から「この工種の前にはこれを準備しておく」「この材料は早めに発注しないと間に合わない」と分かっています。
経験の浅い現場責任者は、問題が起きてから対応することになります。
意識の差
次に、意識の差があります。
「職人が来たらすぐ作業できるようにしておく」という意識がある現場責任者と、「職人が来てから考える」という現場責任者では、段取りの質が違います。
段取りの重要性を理解しているかどうかが、行動の差になります。
見える化されていない
そして最大の問題は、段取りの良し悪しが見える化されていないことです。
段取りが良かったから歩掛が良かったのか、たまたま条件が良かったのか、分からない。
段取りの何が良くて、何が悪かったのか、振り返る仕組みがない。
だから、良い段取りが共有されず、悪い段取りが改善されないのです。
段取り力を育てる
記事31でお伝えした通り、人を育てるには「成長の実感」と「上長の関わり」が必要です。段取り力を育てることにも、同じことが言えます。
歩掛を見える化する
まず、歩掛を見える化することが重要です。
工種別の歩掛が数字で見えれば、「この現場は歩掛が良い」「この現場は悪い」と分かります。
そして、「なぜ違うのか」を分析できます。
段取りを振り返る
歩掛の良かった現場では、何をしたのか。材料の手配は?作業指示は?次工程の準備は?
歩掛の悪かった現場では、何が問題だったのか。手待ちが多かったのは何が原因か?
この振り返りを通じて、良い段取りを学び、悪い段取りを改善できます。
上長が具体的にフィードバックする
記事31でお伝えした通り、「この段取りは良いぞ」と具体的に褒めることが大切です。
「材料の先行手配、よく考えたな」「職人への指示、分かりやすかったぞ」
こうした具体的なフィードバックが、現場責任者の成長を促します。
良い段取りを標準化する
段取り力を組織として高めるには、良い段取りを標準化することが重要です。
暗黙知を形式知にする
ベテランの現場責任者は、良い段取りを「暗黙知」として持っています。しかし、それが言語化されていないと、他の人に伝わりません。
「この工種の前には、こういう準備をする」「材料はこのタイミングで発注する」
こうした知識を言語化し、「形式知」として共有する仕組みが必要です。
チェックリスト化
良い段取りをチェックリストにまとめることも有効です。
「施工の前日までに確認すること」「当日朝に確認すること」
チェックリストがあれば、経験の浅い現場責任者でも、最低限の段取りは漏れなくできます。
歩掛データを比較する
記事30でお伝えした通り、共通の物差し(WBS)で歩掛を比較することが重要です。
現場間で歩掛を比較し、良い現場の段取りを分析する。そして、他の現場に横展開する。
このサイクルを回すことで、組織全体の段取り力が向上します。
まとめ
同じ職人でも、現場によって生産性が50%も違う。
この差は、職人の腕ではなく、現場責任者の段取りから生まれています。
材料が届いていない、指示が曖昧、次工程が準備されていない。こうした段取りの問題が「手待ち」を生み、生産性を下げています。
段取りの差は、そのまま原価の差になり、会社の収益の差になります。
段取り力を育てるには、歩掛を見える化し、段取りを振り返り、上長が具体的にフィードバックすることが必要です。そして、良い段取りを標準化し、組織全体で共有する仕組みを作ることが重要です。
次回は、「良い段取りとは具体的に何か」について、さらに詳しくお伝えします。
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