【番外編④】段取りは現場代理人の特権|生産性を左右する覚悟と使命感 - ニックスジャパン株式会社

 

⏱️ この記事で分かること(読了時間:約5分)

 

 

✅ 生産工学が示す「生産性を握るのは管理者である」という真実

✅ 段取りが現場代理人・責任者だけに与えられた特権である理由

✅ 「工程表は会社と会社の約束事だ」という言葉が示す覚悟

✅ 苦しい現場でも誠実に向き合うことが、長期的な信頼につながる理由

✅ この意識を現場代理人たちといかに共有するか

 

はじめに

 

 前回では、同じ職人でも現場によって生産性が50%も違う理由が、職人の腕ではなく現場責任者の段取りにあることをお伝えしました。

 では、段取りとは一体何なのか。具体的なテクニックの話をする前に、まず根本にある「意識」と「覚悟」についてお伝えしなければなりません。

 

 段取りとは、技術ではなく、現場代理人としての使命感そのものだからです。

 

生産工学が示す真実

 

生産工学の世界には、重要な原則があります。「生産性を左右するのは、管理者である」というものです。

 

作業者の責任とは何か

 

 生産工学では、作業者の責任を明確に定義しています。

 作業者の責任は、「指示されたことを確実に行うこと」です。それ以外ではありません。

 つまり、材料が届いていなければ作業者のせいではありません。指示が曖昧であれば作業者のせいではありません。前工程が終わっていなければ作業者のせいではありません。

 

 これらはすべて、管理者の責任です。

 

管理者が生産性の要諦を握る

 

 逆に言えば、管理者が段取りを正しく行いさえすれば、生産性は大幅に向上するということです。

 職人の腕が良くても、段取りが悪ければ生産性は上がりません。職人の腕が平均的でも、段取りが良ければ生産性は大きく向上します。

 前回の記事でお伝えした「同じ職人でも50%の差が出る」のは、まさにこの原則が現場で起きていることを示しています。

 

 段取りは、現場代理人・責任者だけに与えられた特権です。そして同時に、重大な責任でもあります。

 

「工程表は会社と会社の約束事だ」

 

私が入社して2年目の頃、ある言葉に鉄槌を頂きました。それが、私の建設業への向き合い方を根本から変えました。

 

大学の延長で考えていた自分

 

 私が入社2年目のとき、工程表を作成して現場代理人(工事責任者)に渡しました。

 大学で土木工学を学んでいた私は、技術的な観点から工程を組みました。「この工種はこれくらいかかる」「この順番で進めればいい」という、教科書通りの考え方です。

 その工程表を渡したとき、現場代理人からこう言われました。

 

 「この工程で本当にできるのか。この工程表は、会社と会社の約束事なんだ。」

 

ハッとした瞬間

 

 この言葉に、私はハッとしました。

 技術的に可能かどうかという視点しか持っていなかった自分に、鉄槌を頂いた瞬間でした。

 工程表は、単なる作業計画ではありません。発注者との約束です。会社の信頼をかけた誓約書です。その工程を守るために、現場代理人は全力を尽くさなければならない。

 段取りとは、この「会社と会社の約束」を果たすための行為なのです。

 

 大学で土木工学を学び、その延長線上で考えていた自分の視点の浅さを、痛感しました。技術と現場は、全く別の世界です。現場には、覚悟と責任が必要なのです。

 

苦しい現場での誠実な向き合い

 

現場代理人として初めて現場を担当したとき、私は赤字になりそうだという厳しい局面に立たされました。

 

「お客様のところに行って請求してこい」

 

 初めて現場代理人を務めた現場で、赤字になりそうだと上司に報告しました。

 すると上司からこう言われました。

 「お客様のところに行って請求しろ。それまで、お客様のところにいろ。」

 

 午後から夕方まで、粘りました。しかし、色よい返事は頂けませんでした。

 

それでも工事は順調に完工した

 

 追加費用の交渉はうまくいきませんでした。しかし、工事そのものは順調に推移し、無事完工しました。

 

 その後、2年後のことです。そのお客様から、特命でかなり良い金額の工事を受注することができました。

 

誠実さが長期の信頼をつくる

 

 このエピソードが示しているのは、苦しい局面でも誠実に向き合うことの大切さです。

 追加費用の交渉に粘ったことは、決して無駄ではありませんでした。お客様は「このゼネコンは苦しくても諦めずに向き合う会社だ」と感じてくれたのでしょう。

 工事を順調に完工したことも、信頼の積み重ねです。

 短期的には色よい返事が得られなかったとしても、誠実に向き合い続けることが、2年後の特命受注という形で返ってきました。

 

 現場代理人は、単に工事を管理する人ではありません。会社を代表して、お客様との信頼をつくる人です。

 

段取りへの情熱が会社の命運を左右する

 

「段取りに心血を注いでいるか」。この問いに、どれだけの現場代理人が「はい」と答えられるでしょうか。

 

段取りは特権であり責任である

 

 段取りは、現場代理人・責任者だけに与えられた特権です。

 どの職人をどの工種に配置するか、材料をいつ発注するか、工程をどう組むか。これらはすべて、現場代理人が決定します。作業者には、この決定権がありません。

 

 だからこそ、段取りの結果は、すべて現場代理人の責任です。生産性が上がっても下がっても、利益が出ても損失が出ても、その大部分は段取りによって決まります。

 

一現場の積み重ねが会社の利益をつくる

 

 一つの現場での利益率が1%改善されれば、会社全体でどれほどの利益になるでしょうか。

 10億円の工事であれば1,000万円です。20現場あれば2億円です。

 段取りの良し悪しは、目の前の一工種の話ではありません。会社の年間利益に直結しています。

 

 現場代理人が段取りに心血を注いでいるかどうかが、会社の命運を左右しているのです。

 

「会社を代表している」という意識

 

 現場代理人は、現場においては会社そのものです。

 お客様と接するとき、下請け業者と交渉するとき、職人に指示を出すとき。その一つひとつの行動が、会社の信頼を作り、あるいは傷つけます。

 

 「自分は会社を代表している」という意識を持って段取りに臨む人と、「ただ工事を終わらせればいい」という意識で臨む人とでは、行動の質が根本から違います。

 

この意識をいかに共有するか

 

段取りへの情熱と覚悟は、教えることができません。しかし、感じさせることはできます。

 

数字で見せる

 

 まず、段取りの良し悪しが数字に出ることを、現場代理人に理解してもらうことが重要です。

 e-番割で作業予定を入力し、KUROJIKAで稼働時間を集計すれば、工種別の歩掛が見えます。

 

 「あの現場では、この工種の歩掛がこれだけ良かった」「自分の現場ではこれだけ悪かった」という数字を見せることで、段取りの差が自分事になります。

 

経験を語る

 

 しかし、数字だけでは意識は変わりません。

 ベテランの現場代理人が、自分の経験を語ること。失敗した段取りの話、成功した段取りの話、苦しい現場でどう向き合ったかの話。

 こうした生きた経験が、若い現場代理人の心に響きます。

 

 「工程表は会社と会社の約束事だ」という言葉が、入社2年目の私の心に深く刻まれたように。

 

共通の物差しで自覚を促す

 

 利益額・利益率を全現場で公表し、現場代理人相互に自覚を促すことも効果的です。

 悪者探しではありません。共通の物差しで比較することで、「自分の現場はどうか」という自覚が生まれます。

 

 良い現場から学ぶ。自分の現場を改善する。この動きが、組織全体の段取り力を高めていきます。

 

まとめ

 

 生産工学が教える通り、生産性を握るのは管理者です。作業者の責任は、指示されたことを確実に行うことのみ。それ以外はすべて、管理者の責任です。

 段取りは、現場代理人・責任者だけに与えられた特権です。この特権を、どれだけ真剣に行使しているか。どれだけ心血を注いでいるか。

 「工程表は会社と会社の約束事だ」。この言葉が示すように、段取りとは技術ではなく覚悟です。

 苦しい現場でも誠実に向き合い続けることが、長期的な信頼をつくります。一現場の段取りの積み重ねが、会社の利益を、ひいては会社の命運を左右します。

 「自分は会社を代表している」という意識を、いかに多くの現場代理人と共有できるか。それが、企業の競争力を決めます。

 

 次回は、この段取り力を育てる「次世代の原価管理」についてお伝えします。

 

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