利益は現場を止めない段取りから生まれる
建設業の生産性向上と作業指揮者の役割
建設会社が利益を上げるためには、売上を増やすことも大切です。しかし、売上が増えても、現場の生産性が低ければ利益は残りません。
作業員が現場に入っている。
機械も手配している。
協力会社も動いている。
それでも、施工数量が思うように進まなければ、人工、機械費、外注費だけが増えていきます。
つまり、利益を上げる根本は、現場の生産性を高めることにあります。
同じ人数で、同じ機械で、どれだけ確実に作業を進められるか。
手待ちや手戻りを減らし、どれだけ施工数量につなげられるか。
作業員や機械が、価値を生む仕事に集中できているか。
ここが、建設業の利益を大きく左右します。
建設業で利益を上げる本質とは何か
建設業で利益を上げるというと、まず次のようなことが考えられます。
受注金額を上げる。
協力会社に安く発注する。
材料費を下げる。
作業員にもっと頑張ってもらう。
工期を短くする。
もちろん、これらも大切です。
しかし、利益を上げる本質は、それだけではありません。
本当に重要なのは、現場が止まらず、迷わず、手戻りなく動ける状態をつくることです。
現場が止まれば、人工は増えます。
機械が待てば、機械費は増えます。
材料が来なければ、作業は進みません。
指示があいまいであれば、手戻りが発生します。
前工程と後工程の調整が悪ければ、協力会社同士が待つことになります。
これらはすべて、現場の生産性を下げ、利益を削ります。
利益は、売上ではなく生産性からも生まれる
売上が同じでも、利益が残る会社と残らない会社があります。
その違いの一つが、現場の生産性です。
同じ工事金額でも、段取りのよい現場では作業がスムーズに進みます。
手待ちが少なく、機械の待機も少なく、手戻りも少なくなります。
一方、段取りの悪い現場では、作業員も機械も現場にいるのに、施工数量が進みません。
結果として、人工、機械費、外注費が増え、予定していた利益が削られていきます。
利益を上げるためには、売上を増やすだけでなく、現場の生産性を高めることが欠かせません。
作業員の責任は、指示されたことを確実に行うこと
生産管理の考え方では、作業員の責任は基本的に明確です。それは、指示された作業を、決められた手順で、確実に行うことです。
もちろん、建設現場では作業員の経験や判断も大切です。
しかし、作業員が力を発揮するためには、前提があります。
作業内容が明確であること。
材料がそろっていること。
図面や仕様が確認されていること。
機械が手配されていること。
作業場所が確保されていること。
前工程が終わっていること。
次に何をすればよいか、指示が明確であること。
この前提が整っていなければ、作業員は動きたくても動けません。
作業員を責めても、生産性は上がらない
材料がない。
図面が違う。
指示があいまい。
前工程が終わっていない。
機械が来ていない。
作業場所が空いていない。
他の業者と作業が重なっている。
この状態で、作業員に「もっと頑張れ」と言っても、利益は上がりません。
作業員は、指示された作業を確実に行う役割を担っています。
その作業を確実に行える状態をつくるのは、作業指揮者や管理者の役割です。
現場の生産性が上がらないとき、本当に見るべきなのは、作業員の努力不足ではありません。
作業員が力を発揮できる条件が整っているかどうかです。
現場を止めている原因はどこにあるのか
現場で作業が進まないとき、つい作業員や協力会社の動きに目が向きます。
しかし、本当に見るべきなのは、なぜ作業員が動けないのかです。
手待ちが発生していないか。
指示待ちになっていないか。
材料待ちになっていないか。
図面確認待ちになっていないか。
前工程待ちになっていないか。
機械待ちになっていないか。
段取り替えの指示があいまいになっていないか。
これらは、作業員の努力だけで解決できる問題ではありません。
現場を止めている原因の多くは、段取り、材料手配、図面確認、工程間調整、指示の不明確さにあります。
IE(インダストリアルエンジニアリング)の視点では、管理側の阻害要因も見る
インダストリアルエンジニアリング、いわゆるIEの視点では、現場の生産性を下げる原因を、作業員だけの問題として見ません。
作業員が実際に価値を生む作業をしている時間を妨げている要因を見ます。
作業員側の問題だけでなく、職長・現場監督側の「材料欠品」「指示待ち」、さらに上位管理側の「工程間のすり合わせ」「指示の不徹底」「図面ミス」「材料欠品」などが、現場の稼働を妨げる要因として示されています。
これは、利益を阻害する原因が、作業員本人だけではなく、管理側の準備・調整・指示にもあることを示しています。
現場を止めないためには、管理者が先に問題をつぶしておく必要があります。
作業指揮者とは誰か
ここでいう作業指揮者とは、現場で作業がスムーズに進むように、段取り、調整、指示、準備を行う人のことです。
専門工事業者であれば、職長、作業責任者、現場責任者が該当します。
元請であれば、現場代理人、主任技術者、監理技術者、工事責任者などが該当します。
立場は違っても、役割は共通しています。
作業員が迷わず動けるようにする。
必要な材料や機械を間に合わせる。
前工程と後工程をすり合わせる。
協力会社同士の作業がぶつからないようにする。
段取り替えを明確にする。
作業場所を確保する。
手戻りが起きないように、先に確認する。
このような土壌づくりが、現場の生産性を決めます。
作業指揮者の段取り力が、利益を左右する
作業指揮者の段取りがよい現場では、作業員は迷わず動けます。
材料がそろっている。
図面が確認されている。
作業場所が空いている。
機械が必要な日に入っている。
前工程と後工程の調整ができている。
次に何をするかが明確である。
この状態であれば、作業員は価値を生む作業に集中できます。
反対に、段取りが悪い現場では、作業員や機械が現場にいても、施工数量が進みません。
その差が、労務費、機械費、外注費の差となり、最終的に利益の差になります。
専門工事業者にとっての作業指揮者の役割
専門工事業者の場合、作業指揮者の役割は、自社の作業員と機械を効率よく動かすことです。
何人で作業するのか。
どの機械を使うのか。
どの順序で作業するのか。
材料は間に合っているのか。
作業場所は確保されているのか。
元請や他業者との取り合いは整理されているのか。
これらが整っていれば、作業員は力を発揮できます。
しかし、段取りが不十分だと、現場にはすぐに手待ちが出ます。
人は来ているのに、作業に入れない。
機械は来ているのに、使えない。
材料がなく、作業が止まる。
前工程が終わっておらず、待つしかない。
この時間は、施工数量を生みません。
しかし、人工も機械費も発生しています。
その積み重ねが、原価を押し上げ、利益を削っていきます。
日報で見える、専門工事業者の生産性
専門工事業者にとって、工事日報は生産性を確認する重要な資料です。
何人入ったのか。
どの機械を使ったのか。
どの作業を行ったのか。
どれだけ施工数量が進んだのか。
これらを見れば、現場が効率よく進んでいるかどうかが分かります。
人工は出ているのに、数量が進んでいない。
機械が入っているのに、作業が進んでいない。
同じ作業が何日も続いている。
このような状態は、現場の生産性が下がっているサインです。
元請にとっての作業指揮者の役割
元請の場合、作業指揮者の役割はさらに広くなります。
自社の作業だけではなく、協力会社全体がスムーズに動けるように、工程と現場を整える必要があります。
工程表は現場の実態に合っているか。
協力会社間の作業順序は整理されているか。
前工程と後工程のすり合わせはできているか。
作業場所の取り合いは起きていないか。
段取り替えの指示は明確か。
図面や仕様の確認は遅れていないか。
発注者との協議事項は残っていないか。
これらが不十分だと、協力会社の生産性は下がります。
協力会社の作業責任者が優秀でも、元請の工程調整や段取りが弱ければ、現場はスムーズに進みません。
元請所長の現場運営能力は、協力会社の見積にも影響する
下請の間で、次のような話が出ることがあります。
「A所長の現場なら、この金額で受けられる」
「B所長の現場なら、2割増しでないと受けられない」
これは、単なる好き嫌いではありません。
元請所長の現場運営能力が、協力会社の見積や原価に影響しているということです。
段取りのよい現場は、協力会社もリスクを見込みすぎずに済みます。
手待ちが少ない。
工程が読みやすい。
作業場所が確保されている。
他業者との取り合いが少ない。
急な段取り替えが少ない。
やり直しが少ない。
このような現場であれば、協力会社は効率よく作業できます。
反対に、段取りの悪い現場では、協力会社はリスクを見ます。
手待ちが出る。
急な段取り替えがある。
他業者との取り合いが悪い。
工程が読めない。
やり直しが出る。
夜間作業や応援投入が発生する。
そのリスクは、見積金額や外注費に反映されます。
つまり、元請の現場管理能力は、協力会社の生産性だけでなく、元請自身の利益にも影響しているのです。
利益は、現場を止めない段取りから生まれる
利益を上げるというと、原価を下げる、協力会社に安くお願いする、作業員にもっと頑張ってもらう、という発想になりがちです。
しかし、それだけでは本質的な利益向上にはつながりません。
本当に大切なのは、現場を止めないことです。
作業員が迷わない。
材料を待たない。
図面で止まらない。
機械が遊ばない。
前工程待ちにならない。
他業者との取り合いで止まらない。
段取り替えがあいまいにならない。
この状態をつくることが、利益を生みます。
現場の生産性が上がれば、同じ人工、同じ機械、同じ外注費でも、施工数量が進みます。
施工数量が進めば、実行予算内で工事を進めやすくなります。
実行予算内で進めば、利益が残ります。
つまり、利益は、現場が止まらず、迷わず、手戻りなく動ける状態をつくる管理から生まれるのです。
現場が働ける土壌をつくることが管理の役割
管理者や作業指揮者の役割は、作業員を急かすことではありません。現場が働ける土壌をつくることです。
作業内容を明確にする。
材料を間に合わせる。
図面や仕様を確認する。
機械を適切に配置する。
作業場所を確保する。
協力会社間の工程を調整する。
段取り替えを明確に伝える。
この土壌が整っている現場では、作業員は力を発揮できます。
土壌が整っていない現場では、作業員がどれだけ頑張っても、生産性は上がりにくくなります。
まとめ:利益を上げる本質は、現場が動ける状態をつくること
利益を上げる本質は、現場にもっと働かせることではありません。現場が高い生産性を発揮できる状態をつくることです。
作業員の責任は、指示された作業を確実に行うことです。
しかし、その作業を確実に行うためには、段取り、材料、図面、機械、作業場所、工程間調整が整っていなければなりません。
それを整えるのが、作業指揮者の役割です。
専門工事業者であれば、職長や作業責任者。
元請であれば、現場代理人や工事責任者。
立場は違っても、現場を止めない段取りをつくる責任があります。
利益は、作業員に無理をさせることから生まれるのではありません。
作業員が迷わず、止まらず、手戻りなく働ける土壌をつくることから生まれます。
現場の生産性を高める管理こそ、利益を上げる本質です。
ニックスジャパンの考え方
ニックスジャパンでは、建設業の利益向上は、単に原価を集計することではないと考えています。
大切なのは、現場の生産性を高める管理を、会社の仕組みにすることです。
作業予定を明確にする。
工事日報で、人工・機械・施工数量を確認する。
実行予算と原価を比較する。
出来高と原価のバランスを見る。
段取りや手待ち、材料待ち、指示待ちを早く見つける。
このような管理ができれば、現場の生産性と利益管理がつながります。
KUROJIKAは、工事日報をもとに、作業員・機械・設備の稼働時間を集計し、月次の原価管理や稼働時間一覧につなげるためのシステムです。
e-番割は、作業予定や人員配置、機械配置を見える化し、現場の段取りを支援するシステムです。
MIYABIは、実行予算、代価表、発注、出来高、原価、支払管理を月次管理資料として整え、現場実務と経営判断をつなぐ建設業向け管理システムです。
利益を上げるためには、現場を責めるのではなく、現場が力を発揮できる状態をつくることが重要です。
工事日報、作業予定、実行予算、出来高、原価管理をつなげて、現場の生産性を高めたい。
そのような課題があれば、一度ご相談ください。

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