現場の稼働率を下げているものは何か
建設業の生産性を下げる「待ち時間」と管理の問題
建設現場に、人はそろっている。
機械も入っている。
協力会社も予定どおり現場に来ている。
一日中、現場は忙しそうに動いている。
それなのに、夕方になってみると、思ったほど施工数量が進んでいない。
このような経験はないでしょうか。
現場に人も機械もいるのに、なぜ仕事が進まないのでしょうか。
この問題を考えるときに重要なのが、
現場にいる時間と、施工数量を生み出している時間は同じではない
という視点です。
建設業で利益を上げるためには、単に人を増やす、機械を増やすという考え方だけでは不十分です。
現場の生産性を下げている原因を見つけ、作業員や機械が止まらず働ける状態をつくる必要があります。
そのためには、まず、
現場の稼働率を下げているものは何か
を正しく見ることが重要です。
建設業における稼働率とは何か
建設現場における稼働率を考えるとき、大切なのは、作業員や機械が現場に存在している時間と、実際に施工数量を生み出している時間を分けて考えることです。
たとえば、作業員が8時間現場にいたとします。
しかし、その8時間の中には、
材料を待っている時間。
指示を待っている時間。
図面の確認を待っている時間。
前工程が終わるのを待っている時間。
機械が来るのを待っている時間。
作業場所が空くのを待っている時間。
段取り替えの指示を待っている時間。
が含まれていることがあります。
この時間にも人工は発生しています。
機械が待機していれば、機械費も発生しています。
協力会社が現場に入っていれば、外注費も発生しています。
しかし、その時間には施工数量が増えていません。
つまり、
原価は発生しているが、成果が生まれていない時間
が存在しているということです。
稼働率を見る目的は、作業員を監視することではない
稼働率という言葉を使うと、作業員がどれだけ動いているかを監視するものだと思われることがあります。
しかし、本来見るべきなのは、
誰がさぼっているか。
ではありません。
見るべきなのは、
何が作業を止めているのか
です。
作業員が止まっている原因が、本人の問題とは限りません。
材料が届いていない。
作業内容が決まっていない。
図面が確定していない。
前工程が終わっていない。
作業場所が確保されていない。
このような状態では、作業員がどれだけ意欲を持っていても、作業を進めることはできません。
現場の稼働率を下げる代表的な阻害要因
建設現場の生産性を下げる要因には、さまざまなものがあります。
ここでは、代表的なものを整理します。
手待ち
手待ちとは、作業員が現場にいるにもかかわらず、何らかの理由で作業できない状態です。
前工程の遅れ。
材料の未着。
他業者との作業の重なり。
作業場所の未確保。
機械の到着待ち。
原因はさまざまですが、共通しているのは、作業員自身では解決できない場合が多いことです。
手待ち時間が増えると、人工は発生しますが、施工数量は増えません。
この差が原価悪化につながります。
材料待ち
必要な材料が予定どおり現場に届いていなければ、作業は止まります。
材料待ちは、単なる購買の問題ではありません。
発注時期。
納期確認。
数量確認。
搬入場所。
搬入時間。
保管場所。
工程との整合。
これらが十分に調整されていなければ、現場に大きな待ち時間が発生します。
材料手配は、現場の生産性に直結する管理業務です。
指示待ち
次に何をするのか。
どこまで施工するのか。
どの方法で施工するのか。
誰と調整するのか。
これらが明確でなければ、作業員は動けません。
作業指示が遅い。
指示内容があいまい。
担当者によって説明が違う。
変更内容が現場に伝わっていない。
こうした指示の不備も、稼働率を下げる大きな原因です。
図面確認待ち
建設現場では、図面、仕様、納まり、施工方法について確認が必要になることがあります。
問題は、確認事項が発生してから対応することです。
施工直前になって、
図面が合わない。
寸法が確認できない。
仕様が決まっていない。
発注者の回答がない。
という状態になれば、現場は止まります。
図面確認や協議事項は、施工前にどこまでつぶしておけるかが重要です。
前工程待ち
建設工事は、多くの工程がつながっています。
前工程が終わらなければ、後工程には入れません。ところが、工程表上ではつながっている。
実際の現場ではつながっていない。
ということがあります。
前工程の遅れを後工程に伝えていない。
協力会社間の打合せが不足している。
作業場所の引渡し条件が明確でない。
このような状態では、後工程の協力会社が現場に来ても、作業に入れません。
機械待ち・機械の過剰配置
機械が不足して作業が止まる場合もあれば、逆に機械を入れすぎて作業効率が下がる場合もあります。
必要な機械が必要な時間に来ない。
複数の作業で同じ機械を取り合う。
機械が多すぎて作業動線が重なる。
機械同士が干渉する。
待機時間が増える。
機械配置も、単に台数を増やせばよいわけではありません。
工程と作業量に合わせた山積山崩しによる配置が必要です。
忙しい現場と、生産性の高い現場は違う
現場で人が走り回っている。
電話が鳴り続けている。
急な指示が飛び交っている。
残業が続いている。
このような現場を見ると、
「活気がある」
「みんな頑張っている」
と感じるかもしれません。
しかし、本当に生産性の高い現場でしょうか。
忙しさの原因が、
段取り不足。
確認不足。
材料手配遅れ。
工程間調整不足。
急な変更。
であれば、その忙しさは、生産性の高さではありません。
むしろ、
管理不足を人の忙しさで補っている状態
かもしれません。
生産性の高い現場は、必ずしも慌ただしい現場ではありません。
作業員が次に何をするか分かっている。
材料が必要なときに届いている。
機械が適切に配置されている。
前工程と後工程の調整ができている。
作業場所が確保されている。
このような現場では、静かに仕事が進んでいることがあります。
稼働率低下の原因を、作業員だけに求めてはいけない
現場の進みが悪いとき、作業員や協力会社に原因を求めることがあります。
人数が足りない。
作業員の動きが遅い。
協力会社の能力が低い。
もちろん、そのような原因もあります。
しかし、生産管理の視点では、それだけを見てはいけません。
作業員の責任は、基本的には、指示されたことを確実に行うことです。
そのためには、
作業内容。
材料。
図面。
機械。
作業場所。
工程。
指示。
が整っていなければなりません。
これらを整えるのは、作業指揮者や管理者の役割です。
作業指揮者とは誰か
作業指揮者とは、現場がスムーズに進むように、準備、調整、段取り、指示を行う立場の人です。
専門工事業者であれば、
職長。
作業責任者。
現場責任者。
などです。
元請であれば、
現場代理人。
主任技術者。
監理技術者。
工事責任者。
などです。
立場は違っても、共通する役割があります。
それは、
作業員や協力会社が止まらず働ける状態をつくること
です。
専門工事業者で考える稼働率低下
専門工事業者では、自社の作業員や機械をどう動かすかが重要です。
何人配置するのか。
どの機械を使うのか。
どの順序で施工するのか。
材料をいつ搬入するのか。
どの作業場所から始めるのか。
元請や他業者との取り合いをどう整理するのか。
これらの段取りが不十分だと、すぐに手待ちが発生します。
作業員はいる。
機械もある。
しかし、施工数量が進まない。
この状態が続くと、労務費と機械費だけが増えます。
工事日報で人工・機械・施工数量を見る
専門工事業者の生産性を見るうえで、工事日報は重要な資料です。
何人入ったか。
何時間作業したか。
どの機械を使ったか。
何を施工したか。
どれだけ数量が進んだか。
これらを関連づけて見ることで、現場の生産性が見えてきます。
人工が増えているのに、施工数量が伸びていない。
機械の稼働時間が増えているのに、出来高が進んでいない。
同じ作業が予定以上に長く続いている。
このような動きがあれば、
「もっと頑張れ」
ではなく、
何が作業を止めているのか
を確認する必要があります。
元請の管理が、協力会社の稼働率を下げることもある
現場の稼働率低下は、専門工事業者だけの問題ではありません。
元請の現場管理も、協力会社の生産性を大きく左右します。
工程表が現場の実態に合っていない。
工程間の調整が不十分。
協力会社同士の作業が重なる。
段取り替えの指示が遅い。
図面や仕様の確認が遅い。
発注者との協議事項が残っている。
作業場所の引渡し条件があいまい。
このような状態では、協力会社の作業責任者が優秀でも、現場全体の生産性は上がりません。
工程表を作ることと、工程を管理することは違う
工程表を作成しているから、工程管理ができているとは限りません。
重要なことは、
前工程と後工程が本当に接続できるのか。
協力会社間の作業が干渉しないか。
材料搬入と施工時期が合っているか。
機械配置が集中しすぎていないか。
作業場所を確保できるか。
を現場の実態に合わせて調整することです。
工程表は、予定を表示するためだけの資料ではありません。
現場を止めないための調整の基準です。
元請所長の現場運営能力は、協力会社の原価にも影響する
下請や協力会社の間で、
「A所長の現場なら、この金額で受けられる」
「B所長の現場なら、2割増しでないと難しい」
という話が出ることがあります。
これは単なる好き嫌いではありません。
協力会社は、元請側の現場運営能力も見ています。
段取りがよい。
工程が読みやすい。
手待ちが少ない。
作業場所が確保されている。
他業者との調整ができている。
急な変更が少ない。
こうした現場では、協力会社も余分なリスクを見込まずに済みます。
逆に、
手待ちが多い。
予定が頻繁に変わる。
夜間作業が発生する。
応援人員が必要になる。
機械の待機が増える。
手戻りが発生する。
という現場では、そのリスクを見積に反映せざるを得ません。
つまり、
元請の現場運営能力は、協力会社の生産性を通じて、元請自身の外注費や利益にも影響する
ということです。
稼働率を上げる第一歩は、停止理由を記録すること
現場の生産性を改善するために、最初から難しい分析をする必要はありません。
まず必要なのは、
なぜ作業が止まったのか
を確認することです。
材料待ちだったのか。
指示待ちだったのか。
図面確認待ちだったのか。
前工程待ちだったのか。
機械待ちだったのか。
作業場所待ちだったのか。
停止理由が分かれば、改善すべき場所が見えてきます。
原因ごとに対策を変える
材料待ちが多いなら、材料手配の方法を見直す。
指示待ちが多いなら、作業指示のタイミングを見直す。
前工程待ちが多いなら、工程間調整を見直す。
図面確認待ちが多いなら、施工前確認の時期を早める。
機械待ちが多いなら、機械配置や使用計画を見直す。
大切なのは、停止を一括して「現場の問題」にしないことです。
原因によって、改善する責任者も方法も違います。
工事日報は、稼働率改善の入口になる
工事日報は、単なる作業記録ではありません。現場の生産性を確認するための基礎資料です。
人工。
機械。
作業内容。
施工数量。
これらを見れば、
投入した資源に対して、どれだけ成果が出ているか
を確認できます。
しかし、本当に改善につなげるためには、
作業が進まなかった理由
も見る必要があります。
人工と機械は増えている。
しかし施工数量が進んでいない。
そのとき、
作業員が遅かった。
で終わらせないことです。
何を待ったのか。
どこで止まったのか。
段取りのどこに問題があったのか。
ここまで見ることで、工事日報が生産性向上の資料になります。
建設業の稼働率向上は、無理をさせることではない
稼働率を上げるというと、
休憩を減らす。
動作を速くする。
作業員を急かす。
という話に聞こえることがあります。
しかし、本質は違います。
現場の稼働率を上げるとは、
材料を待たなくてよい状態にする。
指示を待たなくてよい状態にする。
図面確認で止まらないようにする。
前工程待ちを減らす。
機械待ちを減らす。
作業場所を事前に確保する。
ということです。
つまり、
作業員に無理をさせることではなく、作業員が仕事に集中できる状態をつくること
です。
まとめ
現場の稼働率を上げるには、「誰が遅いか」ではなく「何が止めたか」を見る
現場に人も機械もいることと、施工数量が進んでいることは同じではありません。
現場の生産性を下げるものには、
手待ち。
材料待ち。
指示待ち。
図面確認待ち。
前工程待ち。
機械待ち。
作業場所待ち。
段取り替え待ち。
などがあります。
これらの多くは、作業員本人だけでは解決できません。
だからこそ、作業指揮者や管理者が、現場が止まらない状態をつくる必要があります。
利益を上げるために重要なのは、誰が何時間働いたかだけを見ることではありません。
何が作業を止めているのかを見ることです。
停止理由を見つける。
原因を分ける。
管理方法を改善する。
その積み重ねが、現場の稼働率を高め、生産性を上げ、最終的に利益向上につながります。
ニックスジャパンの考え方
ニックスジャパンでは、建設業の利益向上は、単に原価を集計することではないと考えています。
重要なことは、
作業予定。
人員配置。
機械配置。
工事日報。
施工数量。
実行予算。
出来高。
原価。
これらをつなげて見ることです。
現場に何人入ったのか。
どの機械を使ったのか。
どれだけ施工数量が進んだのか。
なぜ予定どおり進まなかったのか。
この情報がつながれば、現場の生産性を下げている原因を早く見つけることができます。
KUROJIKAは、工事日報をもとに、作業員、機械、設備の稼働時間を集計し、月次原価管理や稼働時間一覧につなげるシステムです。
e-番割は、作業予定、人員配置、機械配置を見える化し、現場の段取りを支援するシステムです。
MIYABIは、実行予算、代価表、発注、出来高、原価、支払管理をつなげ、現場実務と経営判断を支援する建設業向け管理システムです。
現場の生産性を高めたい。
工事日報を原価管理だけでなく、改善に活かしたい。
人や機械は投入しているのに、思うように利益が残らない。
そのような課題があれば、一度ご相談ください。

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