⏱️ この記事で分かること(読了時間:約6分)
✅ 稼働と非稼働の正確な定義
✅ 運搬作業が「非稼働」に分類される理由
✅ 建設業における運搬作業の特徴(土木・建築の違い)
✅ 二次運搬・三次運搬を削減する重要性
✅ 稼働率向上による生産性改善の具体的方法
稼働と非稼働の定義
稼働率、稼働、非稼働という言葉は、耳慣れていることと思います。しかし、その定義を正確にご存じでしょうか。生産工学では、次のように定義しています。
稼働とは
稼働とは、製品を作り込むために加工している作業
建設業で言えば:
- コンクリートを打設している時間
- 鉄筋を組み立てている時間
- 型枠を設置している時間
これらが「稼働」です。
非稼働とは
非稼働とは、稼働以外のこと
具体的には:
- 材料を運搬している時間
- 次の指示を待っている時間
- 段取り替えをしている時間
- 休憩時間
これらが「非稼働」です。
一日の作業の中で非稼働はどれくらいあるか
この定義を考えた場合、一日の作業の中でいかに非稼働が多いか、ご理解いただけるでしょう。
運搬作業は非稼働(契約作業は除く)
もちろん、運搬作業は付加価値を生んでいないので、非稼働扱いとなります。ただし、建設業では、DTによる運搬作業等の売上が計上される場合は除きます。しかし、考え方として、以下を参照してください。
- 材料を倉庫から現場に運ぶ
- 資材を作業場所まで移動させる
- 完成品を次の工程に運ぶ
これらは全て「非稼働」です。
非稼働時間の実態
実際にワークサンプリングという手法で、現場の個々の作業(ヒト、機械)の稼働率を計測すると:
- 良くて70%
- 平均すると概ね50〜60%
という結果が出ています。この場合、運搬作業が、契約工種(作業)になっている場合、稼働として処理しています。
つまり、一日8時間働いても、実際に付加価値を生んでいる時間は4〜5時間程度ということになります。
建設業における運搬作業の特徴
建設業の場合、運搬作業には、次のような特徴があります。
土木工事の運搬作業
土木工事では、面的な運搬作業が主体となります。
- 土砂を掘削場所から盛土場所へ
- 資材を資材置き場から施工場所へ
- 広い現場内を水平方向に移動
建築工事の運搬作業
建築工事では、垂直の運搬作業が主体となります。
- 資材を地上から上層階へ
- クレーンによる揚重作業
- エレベーターや荷揚げ機による運搬
生産工学の視点
これらの運搬作業を、生産工学の世界では、付加価値を生まない作業として非稼働扱いとなるわけです。
製造業では、製品に組み込むための部品をいかに作業者の手元に置くかに、随所に工夫が見られます。
ここが重要なポイントになります。
建設業と製造業の違いを乗り越える
「建設業は、製造業とは違う」
そう考えると、話が終わってしまいます。
しかし、「なるほど、運搬作業は付加価値を生まないのか」と考えると、考え方が変わるのではないでしょうか。
建設業のジャストインタイム
建設業はある意味において、在庫を持たず必要な時に必要なものを発注するジャストインタイムの生産方式を行っています。
- 必要な資材を必要な時に発注
- 現場に在庫を持たない
- 保管スペースの削減
これは効率的な方法です。
問題は納入後の運搬
しかし、現場にモノが納入されてからはどうでしょうか。
- 加工するところに直接モノが持ち込まれているでしょうか
- あるいは、二次運搬、三次運搬を発生させていないでしょうか
二次運搬・三次運搬の問題
二次運搬、三次運搬とは何でしょうか。
一次運搬
- 資材が現場に納入される
- トラックから荷下ろしする
これが一次運搬です。
二次運搬
- 荷下ろしした資材を仮置き場に運ぶ
- 仮置き場から作業場所に運ぶ
これが二次運搬です。
三次運搬
- 仮置き場から別の仮置き場に移動
- さらに作業場所に運ぶ
これが三次運搬です。
二次・三次運搬が発生する原因
- 納入場所と作業場所が離れている
- 作業の進捗に合わせた納入ができていない
- 現場の動線計画が不十分
- 仮置き場の位置が不適切
二次・三次運搬のコスト
二次運搬、三次運搬が発生すると:
- 運搬に人手がかかる
- 運搬に時間がかかる
- 運搬中の破損リスクが高まる
- 本来の作業時間が削られる
これらは全て、原価の増加につながります。
運搬作業の効率化による生産性向上
契約において運搬費をいただいていたとしても、運搬作業に着目し効率化することにより、生産性向上を成し遂げ、実績単価(原価)を下げる工夫が必要でしょう。
運搬効率化の具体策
1. 納入場所の最適化
- 作業場所に直接納入できないか検討
- 納入時間を作業開始に合わせる
- 仮置きを最小限にする
2. 動線計画の見直し
- 運搬経路を最短にする
- 障害物を排除する
- 交差を減らす
3. 揚重計画の最適化(建築)
- クレーン配置の見直し
- 揚重順序の最適化
- 荷取りステージの配置
4. 運搬機械の効率活用(土木)
- ダンプトラックの台数最適化
- 運搬距離に応じた機械選定
- 待機時間の削減
稼働率向上の効果
稼働率を向上させると、どのような効果があるでしょうか。
稼働率60%から70%に向上した場合
- 一日8時間のうち、稼働時間が4.8時間から5.6時間に
- 一日あたり0.8時間(48分)の生産時間増加
- 作業員10人なら、一日8時間分の生産性向上
コスト削減効果
- 同じ作業を短時間で完了
- 人件費の削減
- 工期短縮による間接費削減
利益への貢献
- 実績単価(原価)の低減
- 予算との差額が利益に
- 次回見積への競争力向上
稼働率向上のための現場管理
稼働率を向上させるためには、現場管理の質を高める必要があります。
現状把握が第一歩
- 現在の稼働率を把握する
- 非稼働の内訳を分析する
- 改善余地のある項目を特定する
日々のモニタリング
- 毎日の作業時間を記録
- 運搬時間、待機時間を把握
- 改善効果を測定
継続的な改善
- 問題点を発見したら即座に対応
- 改善策を実施し、効果を検証
- 成功事例を他の作業に展開
システムによる稼働時間の把握
弊社のシステムは、稼働率向上のための基礎データを効率よく収集します。
- 翌日の作業予定をデジタル化
- 人員・機材の配置を効率的に計画
- 運搬作業と本作業のバランスを可視化
- e-番割と連動し、月次稼働時間一覧表を作成
- 現場別・人員ごとの稼働時間を自動集計
- 稼働時間データを出来形と照らし合わせ、改善効果を検証
これらのシステムにより、稼働率向上の取り組みを客観的に評価し、継続的な改善につなげることができます。
まとめ
稼働率向上は、生産性改善の重要なテーマです。
重要なポイント:
- 稼働=製品を作り込む加工作業
- 非稼働=運搬、待機、段取りなど付加価値を生まない作業
- 現場の稼働率は平均50〜60%程度
- 運搬作業の効率化で稼働率を向上
- 二次運搬・三次運搬の削減が鍵
運搬作業は付加価値を生まない。この認識を持つことが、稼働率向上の第一歩です。
【関連記事】
→ 利益を生む現場改善①:3S活動
→ ある優良企業との話
→ 生産性を阻害する要因
→ 生産工学における生産性向上
📅 次回配信予定
2024年12月4日(木)10:00配信予定
次回は「利益を生む現場改善③:ECRS改善の4原則」をテーマに、生産工学における時間研究と動作分析、そしてE(排除)・C(結合)・R(再構成)・S(簡素化)の4つの改善視点を解説します。

コメントをお書きください