⏱️ この記事で分かること(読了時間:約6分)
✅ 工事部門長の最大の責務とは何か
✅ 現場状況を効率的に把握する方法
✅ EVMグラフによる「見える化」の実践
✅ 「ほとんどわかっている」が危険な理由
✅ 問題現場への具体的な対応フロー
工事部門長の最大の責務
工事部門長とは、現場責任者の直属上司を指します。組織によっては工事課長、工事部長など呼称は異なりますが、重要なのは現場の最前線に対してどのような支援が可能かという点に尽きます。
工事部門長の業務は多岐にわたります。工程会議の主催、協力会社との折衝、発注者対応、人員配置の調整など、日々さまざまな業務に追われています。しかし、これらの業務の中で最大の責務は何かと問われれば、それは問題を抱える現場への支援であると断言できます。
順調な現場と問題のある現場
順調に進んでいる現場は、現場代理人に任せておけば問題ありません。事後報告、あるいは文書での報告で十分です。
しかし、赤字に陥りそうな現場、工程が遅れている現場については、工事部門長が積極的に関与し、問題解決を支援する必要があります。
前回の記事で解説した「2:6:2の法則」を思い出してください。下位2割の現場代理人が担当する現場こそ、工事部門長が重点的に支援すべき対象です。この2割の現場が赤字を出さなければ、会社全体の利益は大きく改善されます。
現場状況を把握する方法
工事部門長が現場への支援を行うためには、まず現場の工事管理状況を把握することから始まります。工事部門長は当然ながら現場に常駐していませんから、資料によって把握することになります。
まず確認すべき2つの情報
数多くの現場を管理する工事部門長にとって、まず重要な情報は以下の2点です。
第一に、現時点でその現場が黒字であるか否か。 予算に対して原価がどの程度消化されているのか、利益が確保できる見込みがあるのかを把握します。
第二に、工程に乗っているかどうか。 計画した工程どおりに作業が進捗しているのか、遅れが生じていないかを確認します。
ここまでは一般的な管理レベルです。
将来予測という視点
プロジェクトマネジメントの観点からは、さらに一歩進んだ管理が求められます。それは将来予測です。
常に工期内に終了するのか、最終的に利益は確保できるのか、という工事完了時点の予測モデルを持つことが重要です。
「あの代理人は途中まではよいのだが、最終的に利益が出ない」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。これは現状把握だけでは発見できず、将来予測によって初めて察知できる問題です。
EVMグラフによる「見える化」
各現場の工事進捗状況と損益状況を把握し、順調な現場と問題のある現場を選別する必要があります。しかし、この選別に数字を一つひとつ追っていては、時間が無為に過ぎていきます。
そこで重要になるのが**「見える化」**、つまりグラフ表示です。
EVMグラフの3つの曲線
EVM(Earned Value Management)グラフは、以下の3つの曲線を一つのグラフに表示します。
- 予算(PV:計画価値)
- 出来高(EV:獲得価値)
- 原価(AC:実コスト)
このグラフを見れば、工事の進捗状況と損益状況を瞬時に評価できます。
グラフから読み取れる問題
具体的には以下のような判断が可能です。
出来高(EV)が予算(PV)を下回っている場合は、工程が遅れていることを示します。計画どおりの出来高が上がっていないため、何らかの問題が発生している可能性があります。
原価(AC)が出来高(EV)を上回っている場合は、予定より多くの原価がかかっていることを示します。このまま推移すれば、最終的に赤字となる危険性があります。
各現場のEVMグラフを一枚ずつ確認していけば、問題のある現場を瞬時に選別できます。グラフで異常を察知した現場については、さらに詳細な分析に進みます。
「ほとんどわかっている」の落とし穴
多くの工事部門長に「現場の問題点はわかっていますか」とお聞きすると、ほぼ100%の方が「そんなことはわかっている」とお答えになります。しかし、問題点がわかっているのに赤字が発生するのはなぜでしょうか。
ある工事部長の回答
ある上場企業の部長から、こんな話を聞いたことがあります。
「①ほとんどの現場は把握している」 「②今の状況もほとんどわかっている」 「③現場のほとんどの損益状況もつかんでいる」 「④現場の問題点もほとんどつかんでいる」
一見、しっかり管理されているように聞こえます。しかし、具体的に問いかけてみると実態が見えてきます。
具体的な数字で答えられるか
「今現在時点で、どの現場がいくらの損益で、どの作業に問題があり、その作業が生み出している赤字はいくらですか」
この問いに即座に答えられる工事部門長は、残念ながら多くありません。的確な指示を下すためには、精緻な情報を把握していることが不可欠です。
「ほとんどわかっている」は「ほとんどわかっていない」に通じるのです。
感覚的な把握ではなく、数字に基づいた把握が求められます。日々の原価情報をリアルタイムに、各現場の作業レベルで分析できることが、これからの工事部門長に求められる管理レベルです。
問題現場への対応フロー
それでは、工事部門長の具体的な一日の動きを追ってみましょう。効率的に問題現場を発見し、支援するためのフローを解説します。
ステップ1 EVMグラフによる全体把握
まず、担当する全現場のEVMグラフを確認します。グラフを一枚ずつ見ていき、出来高や原価に異常が見られる現場をピックアップします。この作業は数分で完了します。
ステップ2 対比表による詳細分析
問題のある現場を選別したら、次に作業別の予算・出来高・原価対比表を確認します。どの作業で問題が発生しているのか、具体的にどの程度の赤字が生じているのかを把握します。
ステップ3 現場代理人への問い合わせ
詳細を把握したら、問題のある現場の現場代理人に連絡を取り、問題点について問い合わせます。
ここで重要なのは、工事部門長がすでに数字を把握した上で問い合わせているという点です。現場代理人の回答が工事部門長の把握した情報と整合しているか、的を得た回答ができているかを確認します。
要領を得ない回答や、状況を把握できていない様子が見られる現場代理人こそ、本当に問題のある現場の担当者である可能性が高いのです。
ステップ4 現場指導の判断
問い合わせの結果、現場代理人が問題を正しく認識し、適切な対策を講じているのであれば、経過を見守ります。
しかし、問題認識が甘い場合や対策が不十分な場合は、工事部門長自らが現場に赴き、直接指導を行う必要があります。
このフローを日々実践することで、工事部門長は効率的に問題現場を発見し、必要な支援を行うことができます。機械的に全現場を巡回するのではなく、必要な時に必要な現場を見るという効率的な管理が実現します。
MIYABIによる統括管理の実現
上記のような管理を実現するためには、日々の原価情報がリアルタイムに集約され、工事部門長がいつでもアクセスできる環境が必要です。
ニックスジャパンの実行予算管理システム「MIYABI」は、プロジェクトマネジメント理論に基づき、EVMグラフや予算・出来高・原価対比表を自動生成します。工事部門長は、自席にいながら全現場の状況を把握し、問題現場を瞬時に発見できます。
また、MIYABIはインターネットを介したシステムであるため、出張先や自宅からでも現場状況を確認できます。場所を選ばず、必要な時に必要な情報にアクセスできる環境を提供します。
まとめ
工事部門長の最大の責務は、問題を抱える現場への支援です。そのためには、感覚的な把握ではなく、数字に基づいた精緻な情報把握が不可欠です。
「ほとんどわかっている」という状態は、実は「ほとんどわかっていない」に等しいことを認識する必要があります。EVMグラフによる見える化と、予算・出来高・原価対比表による詳細分析を組み合わせることで、問題現場を早期に発見し、適切な支援を行うことができます。
日々の原価情報をリアルタイムに把握し、必要な時に必要な現場を見る。これが、これからの工事部門長に求められる管理のあり方です。
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次回は「経営者の取り組み|不退転の決意と正しい評価制度」をお届けします。工事管理における経営者の役割と、社員のコスト意識を高めるための評価制度について解説します。

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