⏱️ この記事で分かること(読了時間:約6分)
✅ 実行予算管理の3つの本質とは
✅ 実行予算が「誓約書」である意味
✅ なぜ現場責任者自身が作成すべきなのか
✅ 実行予算に求められる要件
✅ 実行予算と工程表を連動させる重要性
実行予算管理の3つの本質
なぜ実行予算管理を行うのか。その本質に迫り、原点を探っていきましょう。
そもそも実行予算とは何のために作成するのでしょうか。実行予算管理の意義は、以下の3点に集約されます。
- 会社と現場代理人との誓約書
- 会社から現場代理人への権限委譲
- 最終損益予測および工事進捗確認
この3つの本質を理解することで、実行予算の作り方も自ずと見えてきます。
会社と現場代理人との誓約書
経営者、現場代理人ともに、この自覚がないと言えるのではないでしょうか。約束(コミットメント)であるとの自覚が両者に欠けているため、形骸化しているように思います。以下、その重要性を点検していきましょう。
コミットメントとしての実行予算
実行予算の最も重要な本質であり、原点。それは会社と現場代理人との誓約書(コミットメント)であるということです。
それぞれの現場代理人が社長に成り代わり、「自分だったらこの工事は、この金額で施工できる」という約束を文書化したもの。それが実行予算です。
単なる数字の羅列ではありません。現場責任者が会社に対して「この金額内で施工できる」と約束する文書なのです。
誓約書だからこそ重みがある
この「誓約書」という捉え方は非常に重要です。
誓約書である以上、達成できなければ責任が問われます。逆に、達成すれば正当に評価されます。この緊張感があるからこそ、現場代理人は真剣に予算を検討し、工事中も予算を意識した管理を行うようになります。
実行予算を単なる「見込み」や「目安」として捉えている企業では、予算管理が形骸化しがちです。誓約書として位置づけることで、初めて実行予算は機能するのです。
会社から現場代理人への権限委譲
人は、責任を押し付けられているだけでは、動きません。権限を与えられるからこそ、やる気が出てくるのです。その責任と権限について考えてみましょう。
責任と権限はセット
コミットメントを行うわけですから、当然、権限委譲が発生します。
現場代理人は、権限委譲された範囲の中で責任を有し、その工事に対して自由に経営資源を利用できなければなりません。予算の範囲内であれば、どの協力会社を使うか、どの材料を調達するか、現場代理人の判断で決定できる。この権限があってこそ、責任を負うことができます。
責任だけ押し付けて権限を与えないのでは、現場代理人は動きようがありません。実行予算は、権限委譲の根拠となる文書でもあるのです。
権限の範囲を明確にする
実行予算によって、現場代理人に委譲される権限の範囲が明確になります。
予算金額の範囲内での発注権限、工程変更の判断権限、人員配置の決定権限など、現場運営に必要な権限が実行予算を通じて付与されます。
逆に言えば、予算を超える支出や、大幅な計画変更については、上位者の承認が必要となります。この線引きが明確になることで、現場運営がスムーズになります。
最終損益予測および工事進捗確認
実行予算がどれだけの精度を持って、運用されているのか、工事の着工から完工まで、一つの実行予算で達成しているのか、疑問を感じる企業もあります。本当にどれだけ、実行予算を大切にするのかは、着工後からです。
ベンチマークとしての実行予算
実行予算は、第一に最終損益に関する目標であり、工事進捗時点におけるベンチマークでなければいけません。
しかし、私が知る限り、実行予算は最終損益予測のみに終わり、工事の進捗とは連動していない場合が多く見受けられます。
工事進捗管理が実行予算とは別に管理されているという、首を傾げざるを得ない管理をしている企業も少なくありません。
進捗管理と損益管理の統合
実行予算と工程表が連動していれば、「今月末時点でどれだけの出来高が上がっているべきか」「それに対して原価はいくらまで使えるか」が明確になります。
この計画値と実績を比較することで、工事が順調に進んでいるのか、問題が発生しているのかを把握できます。
実行予算を最終損益予測だけに使うのは、宝の持ち腐れです。日々の進捗管理のベンチマークとして活用してこそ、実行予算の価値が発揮されます。
なぜ現場責任者が作成すべきか
稀に、実行予算を総務が作成するという離れ業?をする企業もあります。建設経営を放棄しているといっても過言ではないでしょう。その企業では、現場技術者に実際の予算作成能力がないということかもしれませんが、だからこそ作成させて現場管理能力を高めなくては、誰の得にもなりません。予算を作成するからこそ、現場管理能力が高まるのです。
他人が作った予算では機能しない
実行予算書を作成するのは、現場を担当する責任者が行わなければなりません。それ以外の人が作成することは、実行予算の本質論から外れていきます。
なぜここに固執するのか。それは、管理サイクルのP(計画)D(実行)C(チェック)A(アクション)が示すように、コストダウンの達成を含め全ては、この実行予算からスタートするからです。
その実行予算書を現場責任者以外の人が作って、達成度を評価できるでしょうか。
PDCAサイクルの起点
実行予算は、PDCAサイクルのP(計画)に該当します。この計画を自分で立てるからこそ、実行段階での責任感が生まれ、チェック段階での振り返りに意味が出てきます。
他人が作った計画を押し付けられても、「自分の計画ではない」という意識が働き、達成への執着が薄れます。自分で考え、自分で数字を積み上げ、自分でコミットするからこそ、達成に向けた強い意志が生まれるのです。
作成過程での学び
実行予算を自分で作成する過程で、現場代理人は多くのことを学びます。
施工方法の検討、数量の確認、単価の積算、工程の検討。これらを一つひとつ検討することで、工事全体の理解が深まります。どこにリスクがあるのか、どこでコストダウンできる可能性があるのかも見えてきます。
この作成過程こそが、現場代理人の能力を高める最良のOJTなのです。
実行予算に求められる要件
実行予算が、その企業の強さを表していると言って、過言ではありません。同一工種において、単価が倍半分違うということを散見します。それだけ真剣に過去の実績単価(歩掛)をとらえているでしょうか。
最終損益予測だけでは不十分
実行予算は、その達成度が最終予測だけでなく、月次評価が可能で、さらには日次評価までできるものでなければいけません。
工事が終わってから「赤字でした」と分かっても、もう手遅れです。工事中に問題を発見し、対策を講じるためには、日々・月次での評価が可能な実行予算が必要です。
予算単価の算定根拠
予算単価の算定根拠が明確になっているでしょうか。
過去の実績単価より、最新の単価情報を用いているでしょうか。「なんとなくこのくらい」という曖昧な根拠ではなく、過去の実績データに基づいた根拠ある単価設定が求められます。
歩掛の反映
工程表に最新の歩掛が反映され、その結果が実行予算に反映されているでしょうか。
歩掛が工程表に反映されていれば、各作業の所要日数が明確になります。その所要日数に基づいて人員配置や機械配置が決まり、原価が算出されます。
上記の情報が網羅されて初めて、コストダウン実践に対応した実行予算書といえるでしょう。
実行予算と工程表の連動
実行予算と工程表が、連動していない企業を数多く見てきました。完全に、実行予算のことを忘れているといってよいような工程会議が繰り広げられている会社も珍しくありません。
別々の管理では意味がない
実行予算と工程表を別々に管理している企業が少なくありません。しかし、これでは本来の管理効果を発揮できません。
工程表は「いつまでに何をやるか」を示し、実行予算は「いくらでやるか」を示します。この2つが連動していなければ、「今月の計画出来高はいくらか」「それに対する計画原価はいくらか」が分かりません。
月次予算への展開
実行予算を工程表と連動させることで、月次の予算計画が作成できます。
各作業の予定工程に基づき、月ごとの出来高と原価を計画します。これにより、「今月は○○万円の出来高を上げ、原価は○○万円以内に抑える」という具体的な目標が設定できます。
この月次予算と実績を比較することで、工事の進捗状況と損益状況を同時に把握できるようになります。
MIYABIによる実行予算管理
最終損益から日々の管理まで対応
MIYABIは、最終損益予測から月次、そして日々の管理業務まで対応しています。実行予算を作成すれば、自動的に月次の予算計画が展開され、日々の実績と対比できます。
PM手法の採用
プロジェクトマネジメント(PM)の手法を採用しているため、シンプルな入力でかつ多彩な分析が可能です。EVMグラフによる見える化、予算・出来高・原価対比表による詳細分析など、管理に必要な情報を自動生成します。
過去情報の活用
過去の最新工事情報をボタン操作で簡単に実行予算書に取り込め、反映できます。過去の実績単価や歩掛を参照しながら、根拠ある実行予算を効率的に作成できます。
まとめ
実行予算管理の本質は、以下の3点に集約されます。
- 会社と現場代理人との誓約書:コミットメントとしての実行予算
- 会社から現場代理人への権限委譲:責任と権限をセットで付与
- 最終損益予測および工事進捗確認:日々の管理のベンチマーク
実行予算は、現場責任者自身が作成すべきものです。他人が作った予算では、PDCAサイクルが機能しません。自分で計画を立て、自分でコミットするからこそ、達成に向けた強い意志が生まれます。
実行予算を「単なる見込み」ではなく「誓約書」として位置づけ、工程表と連動させて日々の管理に活用する。これが、利益を確保し続ける建設会社の実行予算管理です。
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